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| 結城さんは、『ゴッホの絵本うずまきぐるぐる』『ピカソの絵本あっちむいてホイッ!』等の『小学館あーとぶっく』シリーズを出されていますが、そのきっかけを教えてください。 |
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| 結城: |
もともと私は絵を見ることが大好きなのね。グラフィックデザイナーだし、絵も描くし、絵は見るのも描くのも大好き。だけど、そういう私から見て、アートの世界ってどんどん敷居が高くなっていくように感じたの。もっと私が見ているような、感じているようなやり方で、絵が見られないだろうか、友だちのように絵を見ることできたらいいのになって。そう思ったのがきっかけです。だから、この絵本はまるっきりわたしの個人的な体験を絵本にしたようなもので、初めから子ども向けの絵本を作ろうと思ったわけではないのね。 |
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| 個人的な体験というと、具体的にどういうことですか? |
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| 結城: |
たとえばゴッホ。小さいとき、ゴッホの絵を見たときに、うずまきがぐるぐるしているのが恐くて恐くて(笑)。頭の中にいつまでもうずまきがぐるぐるぐるぐる残って、夜中にトイレにも行けなくなってしまったくらい(笑)。はっきりいって、嫌いだった。
でも、それくらい刺激的だったのね。恐いもの見たさで見ているうちに、かわいいとかおもしろいって思えるようになってきて、だんだんゴッホが好きになっていったの。
その個人的な体験を絵本にしたのが『ゴッホの絵本うずまきぐるぐる』です。 |
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| なるほど。では、その個人的な体験から結城さんが伝えたかったことは何ですか? |
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| 結城: |
いい絵って、いろんな見方ができるし、許してくれる豊かさがあるのよね。一面的な見方、歴史的にこの絵はどういう意味を持っているかみたいな、前もって知識を得て鑑賞するような見方だけではなく、ゴッホに感じたような私のような見方をしてもいいんじゃないかなぁ、って。
私はアートの持つ歴史を否定するわけじゃないの。いろんな見方ができる。それがいい絵なんじゃないか、名画たるゆえんだと思うの。
小さいときって、誰でもお絵かきが好きでしょ? なのに、大きくなるといつのまにか好きだって言う人が少なくなってきている。お母さんたちからもね、よく言われるの。「自分はぜんぜん絵がわからない」って。なぜ、こんなにも楽しい絵のことが、難しいことになってきているんだろう。
「どういう絵がいい絵ですか」。これもお母さんからよく聞かれる質問。
それに対して私は明確な答えを持っていて、好きだな、と思う絵があったら迷わずトイレに飾りなさいと言ってます。毎日、毎日、繰り返し見ることでいろんな発見があると思うのね。そして一ヶ月たっても飽きなかったら、その絵は傑作。見ているうちに飽きてくる絵はたいした絵じゃないの。
そうやって見ているうちに、この絵、好きだなとか、嫌いとか、感じ始めることが絵と友だちになるきっかけなのね。子どもと話してもいいかもしれない。お母さんはこの絵が好きだけど、あなたは? とかね。あーとぶっくシリーズを見て、お母さんと子どもがアートを好きになるきっかけの会話をしてくれたら、とってもうれしい。 |
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| 結城さんにとって「絵」とは、どんな存在ですか? |
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| 結城: |
名画って、友だちのような存在だと思うのね。楽しいときはますます楽しい気持ちに、辛いときはなぐさめてくれる存在。私もいい絵に、ずい分となぐさめられたのよ。
友だちと出会うように、いい絵にたくさん出会ってほしい。
友だちって、最初に出会った頃は、相手のことを何も知らずに好きになるでしょ。つきあっていくうちに、3人兄弟の末っ子だとか、お父さんの職業とか、いろいろとわかってくる。絵も同じだと思うのね。最初はなんとなくこの絵が好きだなと思ってる。そのうちに、たとえばゴッホは自殺したんだ、とか、いろいろなことがわかってくるでしょ。わかることで、一生の友だちができるようなこともありますよね。 |
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| 友だちと出会うように、いい絵に出会ってほしい。『小学館あーとぶっく』シリーズからは、結城さんのメッセージがちゃんと伝わってきます。 |
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| 結城: |
造形的なおもしろさや、見たときに感じた感動を伝えるって、なかなか難しいことなんですが。
だから、私は自分の体験を絵本にしたのね。絵本にしてみると、これがものすごい反響で。お母さんや子どもたちも、こういう本を求めていたんだなぁと思ったの。
でもね、今はもう、そんなことを言う人はいなくなったと思うけど、このシリーズを出した頃は、けっこうたいへんだったのよ。いろいろなことを言う人がいてね。
「ゴッホの名画をうずまきぐるぐるとは何たるこっちゃ」とかね(笑)。
だけど、この本は、一冊ずつ一冊ずつ、作家の遺族の方に連絡をして、私の考えや意向を提出してOKをもらって出しているの。好き勝手に作ってるみたいだけど、作家の人権や著作権を壊さないように、そういうことをクリアにすることに力を入れたのね。ちょっとがんばりました(笑)。
それから、手書き文字にもこだわった。このコンピュータが発達した現代に、何もわざわざここまでと思いながら、夜中にしこしこ作業をしてね。手書きの方が子どもに親しみを持ってもらえると思って。そういうことのたいへんさの方が上だったかな。 |
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| 文章がリズムカルで、まるで詩のように入ってきます。すごく練られた言葉のように感じますが・・・・ |
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| 結城: |
そう言ってくださる人は多いのだけど、ぜんぜん。繰り返し言ってるように、これは私が体験し、感じたままをそのまま言葉にしているので、文章に関してはわりあいスムーズにできました。今度、国語の教科書にも紹介されるのよ。美術の先生よりも、むしろ国語の先生の方がこの本に反応してくれる人が多いみたい。 |
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| 『ひらめき美術館』は、どのようなきっかけで生まれたのですか? |
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| 結城: |
『小学館あーとぶっく』シリーズを見た朝日小学生新聞の方が連絡をくださって。「これを、あなたがひらめいたまま、連載をしてくれませんか」と。それで、『ひらめき美術館』ってタイトルになったの。それからもうずーっとやっています。もともとはモノクロの連載だったのを、読者の反響が大きくて、カラーになったのね。それを小学館で本にしたのが『小学館あーとぶっく・ひらめき美術館』。『あーとぶっく』シリーズ10巻と合わせると、50万部も売れました(笑)。あれよあれよと小学館児童出版文化賞も頂いちゃって。正直言うと、何年も名画のことばっかりやっていると、それが仕事となるとなおさらね、たまに辛くなることもあるの。朝日小学生新聞に連載している『ひらめき美術館』には毎月500通ほど絵が届きますが、見るのはきついなぁと感じるときもあるのよ。でもね、私が小さいとき、こんなのがあったらきっとうれしかったな、って思うの。だからできる限り、続けていきたいと思っています。 |
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| ワークショップもやられていますよね。どんな内容ですか? |
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| 結城: |
『ひらめき美術館』の中の「名画に挑戦!」と同じです。ピカソやモネやいろいろな画家になりきって、自分も絵を描いてみようってことなんですが、優劣をつけるというよりは、画家になりきって遊ぶ感覚を楽しんでもらいたいと思ってやっているの。年に数回のことなんだけど、子どもとじかに接することで、私の方もいろいろな力をもらっているのよ。いろんな子がいてね。ただ絵の具を振り回しているだけの子もいるし、かと思うと「ピカソよりぼくの方がうまい」なんて言い切る子もいる(笑)。子どもといっしょに自由な一日を楽しむことで、元気をもらっているの。すごくめげてるときとか、さっき言ったように仕事が辛くなったときとか、子どもに会うと「この子たちにめがけてやっているんだ」って、元気をもらえる。励まされます。
それに昔はお母さんからの手紙が多かったのだけど、最近は子どもたちからの手紙が多くなって。その中に、「ぼくはモネの絵は好きではありません。ピカソが好きです」なんてのもあって。これってすごいことだよね。ちゃんと絵を見て違いがわかってなければ言えないことです。絵を見てくれているんだ、ってうれしくなってくる。 |
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| 最後に、エコムを見ているお父さん、お母さん方にメッセージを。 |
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| 結城: |
私は、子どもには絵を「描く力」のある子と「見る力」がある子と両方いると思うのね。描く力のある子が必ずしも見る力があるとは限らないし、逆に見る力のある子が描く力があるとは限らない。でも、描く楽しさを知れば見ることも好きになるし、見る楽しさを知れば描く楽しさを知ると思うの。ただ、描け、描けと言われたって、子どもは困るよね。特にモチベーションのない子どもは辛いと思う。それこそ絵を嫌いになってしまう。描く力と見る力をいっしょに育ててあげることが大切だと思います。『ひらめき美術館』の「名画に挑戦!」は、そんな思いでやっていることなのよね。
アートの世界って、答えや正解のない世界でしょ。答えのあるものは勉強すれば理解できるけど、アートってそういうものじゃない。だけど、日本の子どもはどうもそのへんの部分が弱いように感じます。海外でワークショップをやると、他の国の子どもはどんどん自己主張するのに、日本人の子どもは、自分が思ってるように発言することが苦手だなぁって感じる。正解を探してしまうようなところがあるの。でも、鎧をとってあげるとね、だいじょうぶ。いったんきっかけを与えてあげると、表現力だって色彩感覚だって、海外の子に負けていない。それを見ていると、日本人の子はシャイで大きい声で意見を言うのが苦手なだけなんだな、って思いましたね。隠し持ってるいいものを発散する力がやわなだけだって。きっかけがあれば、子どもはどこまでも飛んでいくし、それは世界中の子どもみんな同じ。それくらい私は子どもの力を信じています。お母さんたちは自分の子どもが描く力が弱いって心配する人が多いけど、それは違う。心配する必要はぜんぜんない。小さいときにいい経験をいっぱいすることが大切だと思うのよね。 |
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| 私にも小学生の子どもがいるので、結城さんの言葉はすごく希望が持てるうれしい言葉です。今日はありがとうございました。 |
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