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『子どもの絵を通して、子どもの心に近づいてみよう。』 |
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| 児童美術教育研究所・小さな原始人 高森 俊 |
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第一回 幼児の絵は、「もの」ではなく、「心」を描く
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どんな子どもでも7歳くらいまでは自分の意志によって楽しく絵を描きます。家庭で描くときは鉛筆、クレヨン、マジックなどが使用されています。その絵を年齢別に観察してみると、3歳ぐらいまでは大人の持っている絵の概念では意味のわからない、点や線、円などが描かれるのが大部分です。一昔前までは、親が見て線が引けるようになった、丸が描けるようになったと喜んだ後は、捨てられていました。また、「いたずら描きばっかりして」と、取り上げてしまう親もいました。
しかし、50年ほど前から子どもの絵の研究が盛んに行われるようになり、子どもの描く一枚一枚の絵には心理的な意味があり、大切な精神活動であることが解かってきました。最初はクレヨンを持っても、本来誰にでもある強い好奇心でそれが何であるかを知るために、口に入れたり、噛んだり、下に落したり、投げたりします。他の何に対しても、子どもの好奇心は目新しいものには常に発揮され、とどまることがありません。それを子どもの探究心、研究と見ることができれば、子どもの心を理解する大きな力となりスムーズな第一歩となることでしょう。
クレヨンは色がたくさんあって、子どもの好奇心を刺激します。大人が教えなくても、子どもはクレヨンを使って紙(あるいは床)に、線や点が描けることを発見するまでにそんなに時間はかからないでしょう。線や点が描けるということは、子どもがまたひとつ自分の意志や力によってできることを見つけたことでもあります。その経験の喜びは、子どもの成長にとって、とても大切なものです。
しかし、このへんから親を含めたまわりの大人たちの無理解が、「何を描いたの?」「顔みたいだね」などと、言葉によって押し寄せてきます。
残念ながら大人である我々の頭の中には、絵というのは「顔」や「風景」、「花」、「動物」など、ものが描いてあるものだという概念が深く染み込んでいます。この考えから少しでも抜け出すことが、子どもの絵を理解し、子どもの絵に近づくことになります。
子どもの意志や一人一人の思いを大切に、子どもの心をより深く知ろうとする研究熱心な幼稚園や保育園、そして少数の絵画教室などでは、1歳6ヶ月ぐらいの幼児から筆と不透明水彩絵の具を使わせています。多くの先進的な子どもの絵の研究者は、太い筆と水を使う絵の具の色は、子どもの心を刺激し、楽しく生き生きと自分の思いを表現するのに適していることを知りました。保育園や幼稚園では、絵の具を用意し始めれば、たちまち周りに子どもたちが集まって来て描き始めます。それを見ていると、絵の具と筆がいかに子どもたちが絵を描くのに適しているかが解かります。
子どもが一枚の絵を描こうとするとき、どの紙を選び、何色を使って描くか、判断や決断という本人しかできないたくさんの重要な精神活動と創造力が働いています。もちろん、無意識の活動です。そういった無意識の精神活動がいかに重要なものであるか。子どもの絵から子どもの心を知ろうとする大人たちには、その重要性がずい分前から認識されてきました。子どもの絵の中には、母親や父親との関係、まわりを取り巻く生活環境などが見出されます。それ故に、子どもの絵は、ものを描いているのではなく、「心」を「感情」で描いているので、「何を描いたの?」という問いかけは、4歳くらいまでの子どもにとっては迷惑を通り越して害になると言っても過言ではないでしょう。しかし、子どもの方から自分の描いた絵について話してきたときは、何よりも大切に、その話を十分聞いてあげることが、子どもの心を育てることにもなります。
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